佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか (ブルーバックス)』を読んでみた。
著者は、実際に「インフレーション理論」を提唱した1人だそうです(提言した名前は「指数関数的膨張モデル」)。 大抵の場合、自分のした仕事を書籍などにする際には感情がこもって周りからすると少々分かりにくいものになってしまいがちですが(別に悪いことでもないんですけど)、この書籍は全くそんなことはなく、非常に分かりやすく説明されています。
内容の構成も、「インフレーションの説明」は第2章くらいで終わっていて、後は肉付けと予測・展望という順になってます。 インフレーション理論ってどんなの?という疑問は案外早く説明が終わっていて、それでいて後半は後半でちょっと哲学的なテーマが書かれていて、興味を持続させたまま読んでいけます。 ブルーバックスの中ではかなり読みやすい部類ではないでしょうか。 イラストもなんかほのぼのしてていいですね。
この書籍のキーワードは、「インフレーション」、「マルチバース」、「人間原理」でしょう。 拙者はあまり宇宙論をマジメに勉強したことはないので、これらの言葉はほとんど名前を知ってるだけ(マルチバースは初めて聞いた)でしたが、これらが気になる方は読んでみてはいかがでしょう? もちろん、専門的なことまでは書かれてませんけどね。
P.S. この書籍と直接関係はないことをいくつか。
宇宙の観測は「遠くを観ることは過去を観ること」だというのはよく言われることですが、言い方を換えれば「過去しか観ることができない」わけで、現在の宇宙がどうなっているかってのがどうやって分かるのかというのは未だによく分からない。
ダークマターは「銀河内の星の円運動」からその存在が示されていますが、銀河内の星が(太陽系の惑星のように)定常的な円運動であることは決定されているのかなぁ? 銀河の中心の周りを回りながらそこから遠ざかっているなら、星をとどめておく程のの重力が必要なく、ダークマターも然り、だと思うんだけど。 とは言いつつ、重力レンズの効果から計算した「ダークマターの3次元分布」の CG を見るとダークマターの存在は決定されてるっぽいけど。 んん? でも重力レンズの効果って、ダークマターだけじゃなくダークエネルギーでもあるんじゃん?
インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか (ブルーバックス)
- 作者: 佐藤勝彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
目次
第1章 インフレーション理論以前の宇宙像
第2章 インフレーション理論の誕生
第3章 観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎
第4章 インフレーションが予測する宇宙の未来
第5章 インフレーションが予言するマルチバース
第6章 「人間原理」という考え方