井上薫『「捏造」する検察 (宝島社新書)』読了。
大阪地検の証拠捏造事件を受けて書かれた井上薫氏の著書。 何か月後とかにこの人の著書を読みたくなるバイオリズムがありまんね。 理系出身の元判事さんなので比較的文章は自分に合ってる気がするし。
内容的には『そこまで言って委員会』に出演されていたときの主張を詳細にしたものって感じでした。 ただ、FD データ改竄が証拠捏造と大々的に言われていますが(もちろんそうだけど)、そもそも「検察官による供述調書の作文」自体が証拠捏造で、それが当たり前だという検察組織の雰囲気自体が問題だってロジックはナルホドと納得。
問題の解決には「独立検察官制度」と「再審開始の時限立法」などが提案されてましたが、これらは「委員会」でも触れられてました。 他にも法改正とかの解決策もありましたが。 「再審開始の時限立法」では裁判所の仕事が増えるので「蛇足判決文の廃止」で裁判を効率化せよ!って感じで蛇足判決の話に繋げてました。 もちろん、自分の著書の宣伝を入れて(笑)
以下、この著書とは関係ありませんが、法律って(司法組織もだけど)もっとリファクタリングすべきだと思うんだよね。 法律なんて「これで完璧」ってものはないんだから(永遠のベータ版(死語?))、どんどん条文をつけていかないといけないのは仕方ない。 結果、今や完全にレガシーシステム・・・通り越して「開けられないブラックボックス」になりつつある観が。 こういうときは「機能を変更せずに記述を整理する」リファクタリングをすべき。 で、リファクタリング時に有用なのはテストケースだけど、これは判例によって代替できるハズ。
さらに話を進めると、「テストケース=判例」って類推から、「判例駆動立法」なんてのができるかも(笑) 現行の法律で想定されていないような事件等の裁判では、とりあえず現行法の解釈で判決を出さないといけない。 まぁそれはしかたないとして、その後同様の事件が起きた場合に適用できる法律を作る必要があるので、その事件概要と判決をセットにして「こういった事件に適用できる法律を作るべし」って感じで立法機関に立法要請を出すようにする。 で、立法機関ではそういった法律が必要と判断すれば実際に立法を行う・・・というのが「判例駆動立法」。 三権分立上、司法機関が法律を作るわけにはいかないので、判例によって法律の仕様(〜テストケース)を作ろうってコンセプト。 ただ、仕様を司法が作って、その変更ができないとなると司法が法律作っていると大差ないので、(既に下した判決はもちろん変更されないけど)仕様としての判決、つまり「今後同様の事件が起きた場合にこういう判決を出すべし」って判決は立法機関など*1である程度変更できないとマズイでしょうけど。
・・・という戯言を書いてみました。
- 作者: 井上薫
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/12/03
- メディア: 文庫
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*1:もしくは裁判員のような国民の代表からなる組織などでもいいけど。